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築古物件の原状回復でアスベスト対応は必須?管理会社が知っておくべき法令・調査・費用と業者選びのポイント

築年数の経った賃貸物件の原状回復工事では、アスベスト(石綿)含有建材への対応が法律上の義務となっているケースがあります。2022年4月の改正大気汚染防止法の施行により、原状回復工事であっても一定規模以上であれば事前調査と報告が義務付けられるようになりました。この対応を怠ると罰則の対象になるだけでなく、入居者・作業者の健康リスクにも直結します。

本記事では、築古物件を管理する管理会社・オーナーが知っておくべきアスベスト対応の法令上の位置づけ・調査が必要な工事の範囲・費用と工期への影響・業者選びのポイントまでを体系的に解説します。

なぜ築古物件の原状回復でアスベスト対応が必要なのか

アスベストが使用されていた時期と建材の種類

アスベスト(石綿)は、耐熱性・耐久性に優れた建材として、断熱材・耐火材・内装材など建物のさまざまな部位に使用されてきました。日本では1950年代から本格的に使用が広がり、1970年代に輸入量がピークを迎えました。1975年に吹付けアスベストが原則禁止されましたが、その後も成形板など含有率の低い建材は流通が続き、2006年9月に含有率1%を超える建材の使用が全面的に禁止されるまで、長期間にわたって建材として使われ続けました。

アスベストを含む建材には、天井や壁の吹付け材・屋根材・外壁材・内装ボード・床のクッションフロアの一部・配管の保温材などがあります。築年数の経った賃貸物件では、これらの建材が現在も使用されている可能性があり、原状回復工事で解体・撤去・補修を行う際にアスベストが飛散するリスクが生じます。

法改正でアスベスト事前調査が義務化された背景

アスベストは吸入すると肺に蓄積し、長い潜伏期間(20〜40年)を経て中皮腫や肺がんなどの重篤な健康被害を引き起こすことが明らかになっています。こうした健康被害を防止するため、2020年の大気汚染防止法改正により、建築物の解体・改修工事における事前調査と結果報告の義務化が段階的に進められてきました。

2022年4月からは、一定規模以上の解体・改修工事について、調査結果を都道府県等へ報告することが義務付けられています。さらに2023年10月からは、事前調査を行う者について、建築物石綿含有建材調査者などの専門資格を持つ者が実施することが義務化されました。この法改正により、原状回復工事を発注する管理会社・オーナー側にも、適切な調査体制を持つ業者を選定する責任が生じています。

原状回復工事も調査・報告の対象になる

「原状回復工事は小規模だから対象外だろう」と考える管理会社もありますが、これは誤解です。賃貸物件の退去時に行うクロス張替え・床材の張替え・壁の補修などの原状回復工事も、一定の条件に該当すれば事前調査・報告の対象となります。

特に注意が必要なのは、築年数が古い物件では1室あたりの原状回復工事だけでも報告義務の対象となる金額規模(請負金額100万円以上)に達するケースがあることです。管理会社として「原状回復は調査の対象外」という誤った認識を持っていると、法令違反のリスクを抱えたまま工事を発注してしまう可能性があります。

アスベスト事前調査が必要な工事の範囲

調査・報告が義務となる工事の条件

大気汚染防止法に基づき、以下のいずれかに該当する解体・改修工事は、事前調査の結果を都道府県等に報告する義務があります。

  • 床面積80㎡以上の解体工事
  • 請負代金の合計額が100万円以上の改修工事(原状回復工事を含む)
  • 機械等の解体・改修工事で請負金額が一定額以上のもの

ここで重要なのは、建築年数にかかわらず、アスベストが使用されている可能性がある建築物はすべて事前調査の対象になるという点です。「築浅だから大丈夫」と判断するのではなく、2006年9月以降に着工した建物以外は、原則として事前調査が必要という前提で対応することが安全です。

原状回復工事で対象になる作業・対象外の作業

原状回復工事の中でも、対象となる作業と対象外の作業があります。一般的に、既存の建材を剥がして張り替える・壁や天井に穴を開けて補修する・床材を別の素材に変更するといった、建材を解体・除去する作業は事前調査の対象になります。

一方、すでに剥がれている箇所をそのまま貼り直す・既存の建材を解体せずに上から重ね張りするといった作業は、対象外となる場合があります。ただし、この判断は工事の具体的な内容によって変わるため、判断に迷う場合は専門業者に確認することが重要です。安全側に立って、築年数の古い物件での解体を伴う工事は基本的に調査が必要という認識で対応することをおすすめします。

調査を怠った場合の罰則

事前調査・報告の義務を怠った場合、法律上の罰則が科される可能性があります。調査結果の報告義務に違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、労働基準監督署への報告を怠った場合も同様の罰則が科される可能性があります。

罰則の対象となるのは主に工事の元請業者ですが、管理会社・オーナーとして、適切な調査体制を持たない業者に発注してしまうと、工事自体が後から問題視されるリスクや、入居者・近隣住民への説明責任を果たせないリスクを負うことになります。発注者側としても、業者の調査体制を事前に確認する姿勢が重要です。

アスベスト調査・除去にかかる費用と工期への影響

築年数別のアスベスト含有リスクの目安

管理物件の築年数によって、アスベスト含有のリスクには大きな違いがあります。以下は一般的な目安です。

建築時期含有リスク傾向・備考
1975年以前非常に高い吹付けアスベストが規制前で広く使用されていた時期
1976〜1989年高い吹付けは原則禁止後だが、成形板等に含有製品が多数流通
1990〜2003年中程度規制強化が進むが、一部建材に含有製品が残存
2004〜2006年8月低いが残存可能性あり原則1%超の製品が禁止される直前の期間
2006年9月以降ほぼなしアスベスト含有建材の使用が全面禁止された後

この表はあくまでも一般的な傾向であり、個別の建物に実際にアスベストが含まれているかどうかは、設計図書の確認や現地調査を経なければ判断できません。築年数だけで判断せず、必要に応じて専門家による事前調査を実施することが重要です。

事前調査の費用目安

アスベストの事前調査にかかる費用は、調査の方法と範囲によって異なります。設計図書や過去の調査記録で建材の種類を確認できる場合は書面調査のみで済み、費用も比較的抑えられます。一方、現地でのサンプル採取・分析が必要な場合は、1部屋あたり5〜15万円程度の費用が発生することが一般的です。

管理物件数が多い管理会社にとっては、同一建物・同一仕様の部屋であれば、1室の調査結果を他の部屋にも適用できる場合があり、全室を個別に調査するよりコストを抑えられる可能性があります。建物全体での調査計画を立てることで、効率的かつ正確な対応が可能になります。

アスベストが検出された場合の除去・処理費用

事前調査でアスベストの含有が確認された場合、除去・処理にかかる費用は建材の種類(レベル)によって大きく異なります。費用目安を以下の表に整理します。

項目費用目安備考
事前調査(書面調査のみ)無料〜3万円程度設計図書等で建材を確認できる場合
事前調査(現地調査・分析含む)5〜15万円程度1部屋あたり。サンプル数により変動
レベル3建材の除去(成形板等)数万円〜数十万円面積・部位による。比較的低リスクな建材
レベル1・2建材の除去(吹付け等)数十万円〜数百万円隔離養生・専用設備が必要で高額化しやすい
廃棄物処理費別途加算特別管理産業廃棄物として処理が必要

吹付けアスベストなどのレベル1・2建材は、隔離養生・専用の集塵設備・作業員の特別教育などが必要となり、除去費用が高額になりやすい傾向があります。一方、成形板などのレベル3建材は比較的リスクが低く、除去費用も抑えられる傾向がありますが、廃棄物処理は特別管理産業廃棄物として適切な処理が必要です。

工期が通常よりどれだけ伸びるか

アスベスト対応が必要な原状回復工事では、通常の工期に加えて、事前調査・分析(数日〜2週間程度)・行政への報告手続き(着工前15日までに報告が必要)・除去作業時の隔離養生の設置・撤去(規模により数日〜数週間)といった工程が追加されます。

特に行政への報告期限(着工日の15日前まで)を踏まえると、退去から次の入居までの期間が短い案件では、アスベスト対応が必要と分かった時点で速やかに調査・報告の手続きを進める必要があります。空室期間を最小化するためには、築古物件の退去が発生した時点で早めにアスベスト対応の可能性を確認し、スケジュールに余裕を持たせることが重要です。

管理会社が物件ごとに把握しておくべきこと

物件ごとの調査記録を保管しておく重要性

一度アスベストの事前調査を行った物件については、調査結果を記録として保管し、その後の原状回復工事の際に再利用できる体制を整えておくことが重要です。同じ物件で退去が発生するたびに調査をゼロから行うのは非効率であり、過去の調査記録があれば対応のスピードと精度が大幅に向上します。

管理会社として、管理物件ごとにアスベスト調査の実施状況・調査結果・除去履歴を一覧管理しておくことで、退去発生時の初動対応を迅速化できます。特に大阪市内に多く存在する築古物件を多数管理している場合、この記録管理の有無が業務効率に直結します。

入居者・テナントへの説明責任

原状回復工事でアスベスト対応が必要になった場合、工事のスケジュールが通常より延びることについて、入居者や次の入居予定者への説明が必要になることがあります。特に退去から次の入居までの期間を見込んでいたオーナーに対しては、アスベスト対応によって空室期間が延びる可能性を事前に説明し、理解を得ておくことが重要です。

また、テナントビルにおいては、アスベスト除去作業中の他テナントへの配慮(臭い・音・隔離養生による通路の制限など)についても、事前の説明と調整が必要になります。管理会社として、アスベスト対応の必要性が判明した時点で、関係者への情報共有を速やかに行う体制を整えておくことが望まれます。

アスベスト対応を依頼する業者選びのポイント

必要な資格・体制を持つ業者かどうか

2023年10月の法改正により、アスベストの事前調査は建築物石綿含有建材調査者などの専門資格を持つ者が実施することが義務化されています。業者選定の際は、この資格を持つ調査者が在籍しているかを確認することが不可欠です。

また、除去作業を行う場合は、石綿作業主任者の選任・作業員への石綿特別教育の実施・特別管理産業廃棄物管理責任者の設置が義務付けられています。これらの体制が整っているかどうかも、業者選定の重要な判断基準です。

調査から除去・原状回復まで一括対応できるか

アスベスト調査・除去・原状回復工事を別々の業者に依頼すると、情報の引き継ぎロスやスケジュール調整の手間が発生し、空室期間がさらに延びるリスクがあります。調査から除去、そしてクロス張替えなどの原状回復工事まで一貫して対応できる業者に依頼することで、工程全体をスムーズに進めることができます。

特に、退去のたびにアスベスト対応の可能性がある築古物件を多数管理している場合、調査から工事完了までをワンストップで任せられる業者との継続的な関係構築が、管理業務全体の効率化につながります。

大阪市内の築古物件への対応実績

大阪市内には旧耐震基準の物件をはじめ、築年数の経った賃貸住宅・オフィス・店舗が多数存在します。こうした物件特有の事情(建物の構造・過去の改修履歴・地域の施工慣行など)に精通した業者であれば、調査から対応までのスピードと精度が高まります。

業者を選定する際は、大阪市内での対応実績・有資格者の在籍状況・調査から工事までの一括対応力を確認した上で、複数の業者を比較検討することをおすすめします。

まとめ|築古物件の原状回復は「事前調査」が出発点

築古物件の原状回復工事において、アスベスト対応は避けることのできない法令上の義務です。管理会社として押さえておくべきポイントを整理します。

  • 2006年9月以前に着工した建物は、原則としてアスベスト含有の可能性があるという前提で対応する
  • 原状回復工事も一定の条件下では事前調査・報告の対象になることを正しく理解する
  • 調査・除去が必要な場合、費用と工期の両方に影響が出ることを早期に想定し、関係者に説明する
  • 物件ごとの調査記録を保管し、退去発生時の初動対応を迅速化する
  • 必要な資格・体制を持ち、調査から原状回復まで一括対応できる業者を選定する

アスベスト対応を適切に行うことは、入居者・作業者の健康を守るだけでなく、管理会社としての法令遵守とオーナーへの説明責任を果たす上でも不可欠です。築古物件を管理する上での重要な実務知識として、社内で共有しておくことをおすすめします。

大阪・神戸エリアの築古物件、アスベスト対応もお任せください

株式会社NEOSCOPEは、大阪市・神戸市を中心に原状回復工事・退去立会い代行・リフォームをワンストップで提供しています。建築施工管理技士・石綿作業主任者・石綿含有建材調査者の資格を保有し、アスベストの事前調査から除去、そして原状回復工事までを一貫して対応できる体制を整えています。

築古物件特有の事情に精通したスタッフが、法令に基づいた適切な調査・対応をご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。